ロボット製作を通じて科学を学ぶ教室-クレファスひたちなか校

2023年10月14日

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C-Wave : 遺伝子が目覚める瞬間SWITCH   村上 和雄

C-wave                                       2023/08/12

遺伝子が目覚める瞬間SWITCH                    村上 和雄  サンマーク出版

こちらの本、だいぶ前に読んだものでカバーもなくなってしまったのですが、ふと、もう一度手に取って読んでみたくなりました。そして改めて、皆さんと共有したい内容だなと思いましたのでお付き合いください。

序章:いのちのスイッチ

遺伝子には「スイッチ」がある。遺伝子は固定的なものでなく、その時々の環境や心の状態によって変化する柔軟性がある。それをコントロールしているのが遺伝子のスイッチ。たとえば、大腸菌はブドウ糖を食べて生きているので、乳糖を与えてもエネルギーにすることが出来ない。しかし他に何も与えないで乳糖だけを与え続けるとそのうち乳糖をエネルギーに変えることが出来るようになる。これがまさに科学的に遺伝子が変化した状態。乳糖をエネルギーに変えなければ死に至るかもしれないという環境によって遺伝子がオンになり大腸菌が変化した。同じようなことが人間の遺伝子にも当てはまります。2003年にDNAに書き込まれたヒトゲノムがすべて解読され2005年に解読されたチンパンジーゲノム配列と比較した結果、違いはわずか3.9%。人にあってチンパンジーにない遺伝子は一つもない。遺伝子に記された情報よりも情報に従って遺伝子を作動させる「スイッチ」がオンオフされるタイミング・順序・パターンによって人とチンパンジーの差が生じる。遺伝子スイッチの変化は「環境(物理的要因・食物と科学的要因・精神的要因)」に引き起こされる。つまり、素質という先天的な遺伝子要因より強く、環境や努力といった後天的要因が遺伝子のスイッチを作動させ、人を育て、人を変えていく。特に重要なのが精神的要因すなわち「心の環境」。「心と遺伝子は相互作用する」ならば心の環境を変えることで自分を変え人生を変えることが出来る。

第一章:マイナスからのスイッチオン

環境遺伝学「エピジェネテイックス」とは後天的な環境が遺伝子の「ふるまい」を変え、命のあり方を左右する。その環境の内容は、物質的・科学的要因だけでなく、空気・磁気・波動・音楽・言葉・思い・意識・感情・笑い・感謝・愛情・情熱・歓喜といった心も含めた非物質的な要因も大きく影響していることが証明された。

アメリカの細胞生物学者:ブルース・リプトンは、一つ一つの細胞は独立した生き物であり、人間はその独自の生命体である細胞が60兆個集まった生命の共同体である。その細胞の働きをコントロールするのは心のエネルギーである思いや考え、意識や情熱といった非物質的な「環境」でありそれが細胞の働きを通して遺伝子のスイッチを入れ、生体の働きに影響を与えるとともに私たちの生き方や人生までも変えていく。としている。これは著者が遺伝子レベルでたどり着いた地点に、細胞レベルで到達したことといえる。

一般にマイナスと呼ばれる環境にこそプラスに至る「種子」がたくさん含まれている。マイナス環境に置かれた時こそ心のありようが問われ、また心のありようを整えることが苦労を超えていく何より大きな力となる。(映画「1/4の軌跡」)

第2章:ニコニコ笑顔でいのちがけ

「笑い」に象徴されるポジテイブな心の環境が関係する遺伝子のスイッチをオンにして、①免疫力が高まる(ナチュラルキラー細胞の活性化②痛みの緩和(鎮痛作用のある物質の分泌促進)③ストレス解消とリラックス効果(ストレスホルモンの分泌低下)④脳の活性化(交感神経が優位になり血行促進)等の治療効果や健康効果につながっていく。

心の師:平澤 興(脳神経解剖学を専門とする医学者・京都大総長・勲一等瑞宝章)著者が心から仰ぐのは、その学問的な博識以上に人格完成者であり一人の生活人としての温かさ、穏やかさ、謙虚さを決して失うことがなかった点。「ニコニコ顔でいのちがけ」の生き方を生涯を通じて実践された「求道の巨人」であった点に畏敬の念を覚えた。いのちがけの努力も決して深刻そうな顔をなさらず、いつもニコニコと笑みを絶やすことなくされた。したがって医学の道を究めた知的エリートでありながら冷たさはみじんも感じられず、周囲の人をやさしく、やわらかい気持ちにさせてくれた。素直さ・正直さ・不器用さ・愚直さを人間の第一級の徳と考え、さかしらに利口ぶってふるまうことの愚かさをいさめ、一つのことに鈍に愚直に体当たりで打ち込むことの立派さを説いて、あえて凡俗にとどまる生き方を自分にも課していた。苦しい時にこそニコニコ笑顔を浮かべて生きていくように努めることが大切。

第3章:日本を祈る

2011年3月、東日本を襲った大震災は、日本人の心のDNAを覚醒させるスイッチだった。震災直後の日本人の行動は海外からたくさんの共感・感嘆・称賛の声が上がった。水の配給を整然と並んで誰一人声を荒げず静かに順番を待っている・家に帰れなくなった人達が駅の階段の端に座って真ん中は通行人のために空けている。被災地のがれきの下に埋まっていた財布や現金、貴重品等が警察が保管に困るほど届けられ、次々と持ち主の手に戻っていく。日本人の民族的とも言える美点すなわち冷静さ・忍耐力・礼儀正しさ・思いやり等。

今から120年前、トルコの使節団が来日してその帰途、紀伊半島沖で台風に遭遇し沈没するという事件があった。犠牲者500名生き残ったのが70名という大惨事だった。この時地元住民が総出で遭難者の救出、看護にあたった。もともと乏しかった食料を惜しげもなく生存者に分け与え浴衣などの衣類を持ち寄って寒さに凍えている乗組員を抱きかかえて自分の体温で温めてあげた。そして軍艦を派遣して医師と看護婦を随伴したうえで助かった人たちを母国まで送り届けてあげた。この日本人の行動は国の教科書にも掲載され親日感情につながっている。彼らがその恩義を返す時が来たと考えたのが1985年のイランイラク戦争の時。当時、イラクのフセイン大統領がイラン上空を飛行する航空機は全て襲撃する命令を出したため各国は軍用機などを差し向けて自国民を祖国へ連れ戻したが、日本だけが法律の制約があって飛行機を出せないでいた。その危機を救ってくれたのがトルコ。危険を冒してまで216人の日本人を日本まで送り届けてくれた。外務省がびっくりしてお礼を述べると、彼らは120年前の恩義を持ち出して「あの時海で受けた恩義を今度は私たちが空で返す番です」と答えた。

アインシュタインも大の日本びいき。「嫌味もなく、疑いも深くなく、人を真剣に高く評価する態度が日本人の特色。彼ら以外にこれほど純粋な人間の心を持つ人はどこにもいない。この国を愛し尊敬すべきである」

 

第4章:いのちーその「ただごと」ではないもの

生命は奇跡の集合体。その命の働きを担う遺伝子の情報はヒトの場合、約32億個の科学文字(A:アデニン、T:チミン、C:シトシン、G :グアミン)の4つであり、並び方の可能性は4×32億回。その気の遠くなるような膨大な可能性のうちのたった一つの遺伝子の並びがあなたや私など地球上に生まれたすべての人間一人一人に配されている。宇宙を生み、地球を作り自然を配し遺伝子という設計図を書いてこの世に送り出したもの、生かしているもの。それを「サムシング・グレート(何か偉大なもの)」と名付けています。

 

村上和雄先生や河合隼雄先生の著書はいつも何か大きな可能性に気づかせてくれるのですが、生前の物腰・話し方は、非常にお優しい大きな懐と志を感じずにいられません。是非、お手に取ってみてください。  AS

この本についてはこちらからどうぞ

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